XII 自治公民館活動
2 ホタルに魅せられて〜住民による地域つくり〜

1.はじめに
 中島分館が在る江南地区は、吉井町の西方に位置し、久留米市と接地しています。
肥沃な土地を利用して、米麦はもちろん、果樹・野菜・花などの栽培が行われています。

2.ホタルに使用している用水について
 大石用水路は、本年度全国疏水百選の7位に選ばれています。恩恵を受ける水田面積は、
2,000haに及び、うきは市から久留米市まで及んでいます。ホタルの放流は、その支流で行われています

3.江南校区、中島分館について
 江南校区の世帯数1,067世帯、人口3,583人。小学生の数188人、中学生の数122人。高齢化率26%で、少子高齢化が進んでいます。
 江南には、19の分館があり、各分館長の業務は、うきは市教育委員会の行事への区民の参加奨励、分館内の諸行事などがあります。
 中島分館には、世帯数が41世帯、人口167人。小学生の数11人、中学生の数6人。高齢化率28%の農村地区です。
次は分館の主な行事です。
I.  中島子供会
新入学児・新卒児との交流会、夏のラジオ体操クリスマス会、 夏のレクリエーション(バス旅行)
II. 道路愛護の折、空き缶回収、有志による萩街道の手入れ

4.ホタルの放流の取組み
 当吉井町と嘉麻市が文部科学省の心の教育の指定を3年前に受け、当地区の江南小学校の3年生がホタルの幼虫の飼育をしたのが始まりです。
 3年前、1回目の幼虫の放流は、鯉ヘルペスの発生により水路の水を全面的にストップした為、失敗に終わりました。
 さて、それから2年目の取組みが始まったわけです。やはり3年生の子どもたちで幼虫の飼育をしていただきました。
 10月でしたか、吉井町商工会と3年生の保護者が中心となって、江南スクールネットの方々の協力でホタルの放流地の環境整備を行いました。周辺の草刈りゴミ等、軽トラック数台分を回収しました。
 いざ、幼虫の放流時期になり、いざいざと心を踊らせていました。ところが水がないのです。
地区の中央を流れる北新川が冬場河川の改修工事の為、この秋も2週間ほど水を止めるとのことでした。そうなりますとホタルの餌となるコヒナ(川二ナ)が死滅してしまいます。
 私たちホタル会員は、まず水の確保が大命題になりました。ちょうど3年生児童の父親数名が、江南小PTA役員OBとしてそろっていて、そのつながりから「水を出してみよう、やってみよう」と言う声があがりました。父親7人母親4人、井戸を掘ることになり会館の管理者、責任者の方の同意を得てユンボで掘り進み、機械の届かないところは人力で約5mほど掘り進んで、水の確保を見たところです。
 届かない所からは、ユンボの先に20リットルのバケツ2個をチェーンで吊り下げ、砂・土を運び上げる人海戦術でした。水の確認後は、収水をしながらの悪戦苦闘でした。
 掘り出した石、砂は作業前に改修工事をしていた元の池の改良整備に生かし再利用し、立派な池へと生まれ変わりました。
 池の中央に深みを作り、木の株を配し池らしくしました。上流部は、石と砂を敷きせせらぎを作り、酸素の吸収を図りました。
下流部は、水を確保するためゆるやかな流れにし、止水の為無数の大小の石を配置しました。
ホタル放流写真1 ホタル放流写真2
 放流の日です。西日本新聞社・保護者も来て、一大イベントになりました。
 放流の後、3年生の子ども達は放流を喜び、その後それぞれ個々に池をのぞきに行く姿が見られました。
 又、有志の人達は、なんとかホタルを飛ばそうという気持ちからそれぞれがバケツ一杯のコヒナを何度となく池に放しました。何しろ成虫になるまでに、1匹のホタルが300匹のコヒナを食べるというのですから大変です。
 でも、苦労が稔ったんです。数年は見られないと思っていたホタルが5月の末から飛び始めたのです。5月29日の日には連絡を取り合った仲間たちが大勢集まり、ホタルが飛んだ喜びとその神秘的な情景に、皆時間を忘れて見入っていました。社会福祉会館の池が公民館用地としての話があるということで、6月1日には最寄の市会議員、区長会長、有志の方17〜18名で、ホタル祭りをしました。2匹のホタルを確認しました。人出のほうが多かったようですが、まずは、めでたしめでたしです。
 その後も、子ども連れやお年寄りなど、地域の方々がこの池にホタルが飛ぶ姿を見に来ていました。中には、ホタルを見るのは初めてという女性の方もいて、3年生の子ども達、有志の間だけでなく地域の人まで引き入れることができて、大変嬉しいです。

5.吉井町内への地区公民館の設置の必要性
 私達は、この体験を通して、分館活動の枠を超えた「江南」校区の住民のコミュニティ造りの大切さを学びました。私達の江南小学校校区には私達の分館(類似分館)と同じ分館は19館ありますが、 私達の生活基盤である江南小学校区で、地域の問題解決や、地域の特色を高めたり、地域住民の融和を図り情報交換をするためには、地域を纏める組織・制度の必要性を今回の「ホタルに魅せられて」の活動を通して認識させられました。
 公民館活動という本質を考えた時に、今迄の活動は勿論のこと、地域住民のより良いコミュニティ造り・学習や情報交換の場・少子高齢化社会における福祉活動の拠点としてみんなが集まり、協議し、地域のこと・自分達のことをより良くしていく目標を持った地区公民館の存在が是非必要だと思うようになりました。
 うきは市は、平成17年3月に合併しました。浮羽町には、7地区それぞれ地区公民館があり、それぞれの公民館に館長・主事が配置され、地区独自の公民館活動が展開されています。一方吉井町では、先に述べましたように、中央公民館と類似分館の体系でした。
 今、各校区に地区公民館の設置に向けた準備委員会を組織し、設置のための検討をしております。吉井町内の4つの校区に地区公民館が設置されることが、今後のテーマではないかと思います。

6.今後の課題
 最後になりましたが、これからの江南に必要だと考えている課題を申し上げ、締めくくりたいと思います。
一. 地域で子どもを育てる環境づくりや気運の醸成と取組みが、さらに必要だと考えております。
二. 子どもたちが、異年齢集団の中で遊ぶ環境づくり。併せて急速な高齢化に対応する取組みの実施。
三. 私たち分館長を中心に地区の住民が、時代の要請・時代の変化に応える各種行事の取組みを前向きに検討、実施すること。
こんなことが、これからの公民館活動で大切だと考えております。

問合せ先
〒839−1308 うきは市吉井町八和田223−1
TEL 0943−76−3068(FAX兼用)
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