第52回 福岡県公民館大会−報告−

 平成19年8月8日(水)、直方市の「ユメニティのおがた」において、県内各地から関係者約1,000名の参加者を得て、第52回福岡県公民館大会が開催された。

 我が国は、人口減少時代を迎えるとともに、今後団塊世代の大量退職によって本格的な高齢社会に移行する。少子・高齢化の進展は人口構造の歪みを生み、都市化、核家族化などと相まって、家庭・地域の教育力の低下、地域の活力の低下などを招いている。このような中で、地域づくり・人づくりの拠点としての公民館が果たす役割はますます重要になっている。このことから、今回は「公民館の家庭教育支援 今、何ができるか」〜子どもの生活リズム向上「早寝・早起き・朝ごはん」県民運動〜を大会テーマとし、講演、シンポジウム等を行った。

 午前中の大会式典の表彰式では、長年にわたり公民館活動に尽力し功績のあった39名の公民館役職員と3館の優良公民館が表彰された。

 講演では、「家庭の教育力を高めるために、社会教育の力を」と題して、松山東雲女子大学学長代行の塩崎千枝子氏から、社会の変化に対応する公民館の活動の方向性についてご講演いただいた。家庭教育支援のために必要な、新たなコミュニケーションづくりや開かれた公民館をどのようにつくっていくのか特に、家庭の教育力を高めるためには社会教育の力が必要であるという、今後の公民館運営上のヒントをいただいた。

 午後は、まず、文部科学省からの施策説明として、生涯学習政策局男女共同参画学習課の岩佐敬昭氏から、家庭の教育力を巡る国の動向、公民館の現状と振興施策等について分かりやすく説明いただくとともに、今後の公民館の方向性について改正教育基本法における生涯学習関連項目の説明を基に示唆をいただいた。

 シンポジウムでは、「公民館の家庭教育支援 今、何ができるか」と題し、コーディネーターとして古市勝也氏(九州共立大学教授)、シンポジストとして塩崎千枝子氏(松山東雲女子大学学長代行)、城月カヨ子氏(宗像市教育委員会教育長)、宮本和代氏(北九州市教育委員会生涯学習総合センター社会教育主事)、黒田修三(福岡県教育庁北九州教育事務所生涯学習室長)に登壇いただいた

<シンポジストからの提言>
(城月氏)
○行政からのトップダウンが何かと多いが、行政と公民館が同じ目線に立ち、お互いに情報を提供しながら、課題を見付けていくことが大切である。
(宮本氏)
○子育てサポーターを育てるためには、活動方法のスキルアップと共に、精神的なフォローを行う必要がある。
○結果を求めるためつい急ぎすぎの感があるが、ちょっと後押しして寄り添う感覚が大切である。
(黒田氏)
○少年犯罪の報道は、とかく学校や家庭を攻める傾向にある。地域社会や公民館は何をしているかという報道はない。 地域や公民館が期待されるためには、何ができるかを捉え直す必要がある。「大人が変われば、子どもが変わる」
○自治公民館と公立公民館の役割を明確にし、地域の課題を明らかにし柔軟な対応を取る必要がある。
(塩崎氏)
○公民館で様々な活動をしていくことが地域の人づくりへつながる。 次の世代の育ちを支えるため、公民館や行政が今、何ができるかと問われている事を再確認し、みんなが育ちあう視点で取り組む事が必要である。

<コーディネーターのまとめ>
(古市氏)
○対人コミュニケーションひとつをとっても、それを日常行っているかいないかで、子どもにも大きな格差がついている。 地域の人々を中心に、子供を持つ親を励ましながら、学校・行政・地域がつなぎあい、協力しあい、育ちあっていく事が大切である。

<参加者アンケート結果>
  アンケート回収の結果、約3割の参加者からご回答をいただいた。
  参加者の内、20代30代の参加者が全体の3%程度で、50代、60代が60%程度である。
  講演、シンポジウムについては、約7割以上の方が大変参考になった・参考になったと回答しており、 「親との交流、対話、支援が重要であることが分かった」などという前向きな意見が多くみられた。 県大会の研修内容が、今後の公民館活動に役に立つと分析できる。以下、講演とシンポジウムについての結果である。

○講演内容について
大変参考になった 参考になった どちらともいえない 余り参考にならなかった 参考にならなかった 無回答
45 101 19 3 1 4 173
町村 14 47 3 3 0 1 68
不明 1 4 2 2 1 2 12
60 152 24 8 2 7 253
% 23.7% 60.1% 9.5% 3.2% 0.8% 2.8% 100.0%
[意見]
○余り関心を持っていなかったテーマであったが大いに役に立つ話であった。
○公民館の役割−居場所づくりと発表の場づくり−のヒントになった。
○日頃公民館活動で実践している社会教育活動が間違っていないと自信を持てた。
○今子育て中の親に参考にして欲しい講演の内容であった。
○家庭での子育て、地域の関わりの不足などいわれているが、公民館がどう関われるか具体的な事に触れて欲しかった。時間が不足していた。

○シンポジウムについて
大変参考になった 参考になった どちらともいえない 余り参考にならなかった 参考にならなかった 無回答
41 90 19 1 1 21 173
町村 17 32 10 3 0 6 68
不明 0 4 4 0 1 3 12
58 126 33 4 2 30 253
% 22.9% 49.8% 13.0% 1.6% 0.8% 11.9% 100.0%
[意見]
○いろいろな方面からの話が聞けて大変参考になった。
○大切なものは何かを考える時間になった。現実に生々しい声を聞き、今後事業を実施するにあたり、何度も何度も繰り返しながらやって行かねばと感じた。
○家庭教育、子育ての拠点としての公民館(市民センター)の役割を再確認できた。地域へ発信していく場として頑張っていきたい。
○理論的には立派と思うが、現場では非常に難題だと思う。しかし、何もしないでは進歩がないので少しでも実現できるよう努力しなければいけないと思う。
○分科会形式の方が、こちらからの質問などができるのではないかと思った。

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